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高森明勅
2020.8.1 06:00皇統問題

憲法第2条の比較

帝国憲法の第2条には、皇位の継承について、以下の規定があった。

「皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依(よ)リ皇男子孫之(これ)ヲ継承ス」
これに対し、現憲法の同条は次の通り。

「皇位は世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、
これを継承する」これらの条文を比べると、2点、明確な違いを指摘できる。

(1)前者の場合、皇室典範への議会の関与はない。
これに対し、後者では国会が典範を「議決」する。
(2)前者が皇位の継承資格を男系男子(皇男子孫)に限定しているのに対し、
後者は「世襲」とするのみで、そのような限定は設けていない。

(1)は、皇室自律主義と国会中心主義の対立だ。
(2)は、明治時代に採用された「男系男子」という縛りを、
今の憲法が“除外”したことを意味する。

憲法は世襲、つまり「皇統」による継承だけを求めている。
「男系男子」という縛りは、法的には(憲法と同等だった)明治の典範とは異なり、
(憲法より下位の)「法律」に位置付け直された今の典範の規定に、
根拠を持つに過ぎない。

従って、典範の改正によって、「男系男子」の限定を変更することが
可能というのが、政府見解でも学界の多数説でも、一致した立場だ。
ごく当たり前の前提知識ながら、意外に見落とされがちなので、念の為に。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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